電子書籍で佐伯 一麦さんの「光の闇」を読んだ
表紙の絵に 引き付けられた
文中にも出てくる 13歳で聴力を失い“静寂の詩人”と呼ばれた画家
松本竣介さんの「 水を飲む子供」
うつろな眼 寂しげな表情が印象的だ
顔と手のアンバランスも 不思議な雰囲気
聴覚、視覚、嗅覚、脚、声、記憶
さまざまな肉体的欠陥を持った人々の
“欠損感覚”を探っていく連作短篇集📖
すべての話が印象に残る
欠損を抱えた生活や 心情を想像してみた時に
私が 思い付くことなど 薄っぺらくて 上っ面だけだなと痛感させられた
目が見えない人が 笑い顔を見たことがないから笑顔がわからない とか
臭いが嗅げなくなった時の世界は “ 静か ” だとか
「痛感させられた」と書いたけど
決して 押しつけがましいのではなく
本人たちが語ることばを 主人公が 大切に聞いている感じ。
“ 日常を生きている ” それを 語ってくれている
途中で 東日本大震災が起こり
もちろん ハンディを持っている人たちにも 平等に襲い掛かる
ハンディを持つゆえの それぞれの体験談が貴重だ
最初に登場した 聴覚障がいのご夫婦のお宅は 津波で流され、
お二人のその後の消息はわからない
このことを 知った後で もう一度 最初の話を読み返すと
あの明るさが 悲しい
地震も “欠損感覚”のひとつなんだと 思った
ハンディと共存している人達は
受け入れ方は色々あっても
受け入れたあとは みんな 淡々と生活している
失うことで得る世界の中で 気負いなく それでいて しっかり
“自分” を 生きているな~と
色々 考えさせられる本でした